ごじゃはげ

日記と雑記とみじかい創作

おいしい給食

キャンペーン終わったの? と友人から連絡がきた。
キャンペーンと銘打ったものの期間は決めていなかったので、このままひっそりフェードアウトしてうやむやにしようとしていたのだけど、読んでくれていたことがうれしかったので書きます。キャンペーンはうやむやにしておきます。

タイトルは最近見ているドラマです。
すこし前から見始めたこの『おいしい給食』というドラマがめちゃくちゃおもしろい。1980年代を舞台にしたドラマで、市原隼人演じる給食に愛と情熱のすべてを傾ける中学教諭が主人公。市原隼人さん、私はとくに何の感情も持っていなかったのですがこの作品を見たことによって今やかなりの好感を持っています。オーバーな演技、キレのある動き、ワイシャツに隠しきれないガタイの良さ。それらすべてが主人公の狂気をよりいっそう引き立てている。とくにガタイの良さというのがポイントで、「筋肉バカ」設定の体育教師よりも厚い胸板、腕のたくましさ、首の太さ、見るからに体幹が強そうな姿勢の良さ。生徒相手に出す声のドスのきき方も凄まじく、そんな彼がちいさなアルマイト皿と先割れスプーンを手にきゃっきゃしているときのギャップが完璧です。完璧に面白い。あとこの時代設定もまた絶妙で、現代であれば問題になりそうな場面もこの時代ならさもありなんと見流せてしまう。
私が今見ているシーズン1は2019年に放送されていたものらしいのだけど、こんなおもしろいものが放送されていたなんて全然知らなかった。24分の枠だから深夜だったのかな? 映画化もされているらしく、現在はシーズン2が放送中とのこと。まだしばらく楽しめそうで嬉しい。とにかくめちゃくちゃおもしろいのでみんな見てください。Amazonプライムビデオで見られます。

給食といえば小学生の頃、母は毎朝登校前にその日の給食の献立を教えてくれた。「今日はカレーだって」とか、「揚げパンが出るよ」とか、冷蔵庫に貼った献立表を毎日読みあげて私に教えてくれていた。おそらくそうすることで、私の登校意欲をすこしでもアップさせようとしてくれていたんだと思う。私は十歳くらいまでかなり無口でぼんやりしている鈍くさい子で、もちろん今でもぼんやり鈍くさいところはあるんだけど、当時の私の無口・ぼんやり・鈍くささは常人の比ではなく、そんな子が学校生活をうまくやれるはずもないから三年生くらいまで小学校は全然楽しい場所じゃなかった。だから、実際ほんとうに体が弱いということもあったけど、熱もないのにしょっちゅう学校を休んだし、隙あらば保健室でぐーぐー寝ていた。そのせいか今でも小学校について思い出すときには、いちばん最初に保健室の天井とベッドリネンのにおいがよぎる。当時の保健の先生は、あきらかに仮病でも私をベッドで一時間でも二時間でも寝かせてくれた。私は今とちがって無口でぼんやりして鈍くさく、でも今とおなじく単純で食いしん坊だったから、母から給食の献立を聞くと(カレー……)(揚げパン……)なんて思ってたしかにちょっとだけ行く気になった。本当にちょっとだけだけど。
みんなで向かい合っておしゃべりしながら楽しく食べなきゃならない時間は正直言って嫌いだったし、牛乳は好きだったけど瓶に直接口をつけるのとか、どれだけ注意して飲んでも牛乳が瓶を伝ってトレイの上で白い輪っかをつくるのとかはかなり嫌だった。それでも給食自体は好きだったと思う。はっきり言っていまいちなメニューも多かったけど、好きなメニューも結構あった。ワカメごはん、こぎつねごはん、イカ飯、ジャージャー麵、大学芋、中華コーンスープ、揚げ餃子、さんまのかば焼き、大豆とじゃこの甘辛炒め……ほかにももっとあった気がする。そういえばエビクリームライスというメニューがあって、これは給食でしか見たことがないメニューだった。今思えばただのエビ入りクリームシチューかけご飯なんだけど、私はこれが大好きで、母に口頭でああでもないこうでもないと説明して作ってもらった。
ちなみに私が小学校を卒業した後、母は講師として小学校に勤務しはじめて、今も現役で働いている。働きだしてからも母はその日の給食の献立を教えてくれたり、おいしかったメニューの話をしてくれる。と、ここまで書いてもしやあの頃日々献立を教えてくれていたのは、ただ母自身が給食好きだっただけなのではないかという疑惑が浮かんだけれど、浮かんでいないふりをします。おいしい給食、ひさしぶりに食べたいね。