ごじゃはげ

日記と雑記とみじかい創作

【100w novel】魔術

 夕立に崩れてしまった塔の屋根を踏みつける足の親指にあるほくろの色は遠い国では魔術に使われていたという石の色、石のまわりに置かれた蝋燭がすべて溶けてしまう前に願いを千百十一回唱え、猫の髭と月の光をまぜた水、そこに胡椒をすこしと鼠の灰、すべてをあわせて銀の匙でゆっくりと薔薇の苗にあたえた後にそこから咲いた花を摘み、花瓶に挿したその花の色が変わってから三日後にあたたかい雨が降ればあなたの願いは叶います。
 だけど残念ながらこの魔術は、言葉に変えて伝えた時点で効力がなくなってしまうのです。