ごじゃはげ

日記と雑記とみじかい創作

創作

【創作】瑠璃鐫花娘子(ルリチュウレンジ)

アザレアの葉がやられてしまうから、幼虫を見つけたらぜったい駆除してちょうだいと母さんは言うけれど、ぼくははあいと返事をしながらその幼虫をそっとつまみあげて小箱にしまう。小箱のなかではもうすでに、なん十匹もの幼虫が不自由そうに、棒状の小さな…

【創作】カストルとポルックス

双子が座ったのは窓際のソファ席だった。「いらっしゃいませ」と声をかけるよりも早く、双子はさっさと腰を下ろし、下ろすなり同じようなパソコンをひらき、同じように一心不乱に何かを打ち込み始めた。注文を取りに行くと、双子はこちらを一瞥もせず、同時…

【創作】バステト

むかし むかし、 そのむかし、 とても たのしい ころのこと、 いっぴきの ねこにゃあにゃあが、 みちを やってきました。 みちを やってきた ねこにゃあにゃあは、 くいしんぼぼうや という、 かわいい、 ちっちゃな、 おとこのこに、 あいました。(Once up…

【創作】穴子プリン

山本十鱒(やまもととおます)の好物は穴子プリンで、それは彼の義理の祖母にあたるミツエさんがよく作ってくれるおやつであった。ミツエさんの家へ行く前日に、彼は濡れたままの長い髪を枕の上に広げながら妻に言う。「明日は穴子プリンがあるかな?」妻は眠…

【小説】星を飼う

星を飼うのが流行りだしたのは去年の終わりごろからだった。 もともとそんなに興味があったわけではないけれど、飼っている子からかわいいよという話はよく聞いていた。写真を見せてもらうとたしかに星はかわいくて、家に帰ってこんな星が待っていてくれたら…