ごじゃはげ

日記と雑記とみじかい創作

【100w novel】たんころりん

 夕暮れ時に妙な歌が聞こえてきた。
「たん、たん、ころりん、たんころりん
 外へ出てみると、変わった着物の老人が歌いながら通りを歩いていた。
「たん、たん、ころりん、たんころりん
 歌いながら、老人は袖から熟れた柿の実を取り出し、家々の庭に放り投げていく。不思議に思い後をついて行ったら、今はもう誰も住んでいない古い家の前で老人は突然消えてしまった。古い家の庭には大きな柿の木があった。老人が柿の実を投げた家々の庭には翌年柿の木が生えた。古い家は取り壊されて、老人の姿は二度と見なかった。