ごじゃはげ

日記と雑記とみじかい創作

2021-02-02から1日間の記事一覧

【小説】星を飼う

星を飼うのが流行りだしたのは去年の終わりごろからだった。 もともとそんなに興味があったわけではないけれど、飼っている子からかわいいよという話はよく聞いていた。写真を見せてもらうとたしかに星はかわいくて、家に帰ってこんな星が待っていてくれたら…

【100w novel】垢嘗

引っ越してから、風呂掃除は一度もしていなかった。忙しかったし、汚くたって全然平気だったから。ある晩、もう真夜中を過ぎてから、風呂場の方から音がした。ざりり、ざりり。そっと扉をあけて覗いたら、緑色の肌をした子どもがしゃがんでいるのが見えた。…

【100w novel】たんころりん

夕暮れ時に妙な歌が聞こえてきた。「たん、たん、ころりん、たんころりん」 外へ出てみると、変わった着物の老人が歌いながら通りを歩いていた。「たん、たん、ころりん、たんころりん」 歌いながら、老人は袖から熟れた柿の実を取り出し、家々の庭に放り投…

【100w novel】鵺

すっかり痩せさらばえてもなお、欲望に瞳を爛々とさせた父親は、病院のベッドの上でこう言った。「橋の上で何かの鳴く声が聞こえても、決してそれを見てはいけない。悪いことが起きるから」と。日暮れの橋を渡るとき、私は何かの鳴き声を聞く。今まで聞いた…

【100w novel】酒呑童子

「お坊様、どうぞどうぞ」 勧められ、つい一口酒を舐めてしまった。そこからはもう止まらなかった。喉を焼く酒の甘い香りに、かつての快感を思い出した。法衣は乱れ、盃は乾く暇もなく、ただただ愉快でたまらなかった。俺は落ちていた鬼の面を付け、一晩中踊…

【100w novel】猫又

やわらかな毛を撫でながら、「ずっと元気でいてね」と私は言った。猫は気持ちよさそうに目を閉じて、鼻先を手にすりつけた。私を見上げ、にゃあ、と鳴いた。猫は私の言葉通り、ずっと元気でいてくれた。十年、二十年経っても、ずっと元気でいてくれた。 六十…

【100w novel】河童

「また来るでしょ?」 私が町へ戻るとき、その子はかならずそう訊いた。夏のあいだだけ過ごす祖母の家。裏山に流れる川が私たちの遊び場だった。もちろん、と私は答えた。約束するよ。「嘘ついたら、水の中に引きずりこんでやるから」そう言った顔をみたとき…

このブログについて

日記や雑記や創作(掌編や超掌編)をアップするための場としてつくりました。 【100w novel】英訳の100word novel用に書いた超掌編(220~240字くらい)です。【小説】400~2000字くらいの掌編小説をあげる予定です。【日記】日記です。(たぶん)【雑記】日…