ごじゃはげ

日記と雑記とみじかい創作

【100w novel】河童

「また来るでしょ?」
 私が町へ戻るとき、その子はかならずそう訊いた。夏のあいだだけ過ごす祖母の家。裏山に流れる川が私たちの遊び場だった。もちろん、と私は答えた。約束するよ。「嘘ついたら、水の中に引きずりこんでやるから」そう言った顔をみたときに、そうだ、この子は人ではないのだと気がついた。
 その冬、祖母が死んだ。祖母の家は売り払われて、夏になっても山へ行くことがなくなった。あれ以来、私は川に近づかない。